「人生100年時代は嘘」なのか【検証】

人生100年時代という言葉があるけどみんなが100年も生きるようになるなんて嘘だよね。人間はそんなに生きられないよね? もし人生が100年になるというのが嘘なら、『LIFE SHIFT』のなかで書かれている人生100年時代による様々な影響やとるべきアクションは気にすることはないのかもしれないな。そのようにお考えの方へ。

この記事では、人生100年時代が嘘だという主張、そしてソ連関連してよくみられる主張の内容を検証しその結果について解説します。

男は約80歳、女は90歳手前までしか生きない?

この主張こそ、人生100年時代が嘘だというメインの主張です。この主張が本当なら、人生100年時代の大前提となる「多くの人が100歳を超えて生きるようになる」が嘘になります。人生100年時代という考え方では多くの人が100歳を超えて生きるようになることを大前提に置いているので、ここが揺らぐとそのあとの話は全て意味がないかそれほど重要でない話になってしまうでしょう。では確認していきましょう。

2つの異なる寿命算出方式

まず、『LIFE SHIFT』の中で寿命が100歳を超える人が増えると言われるときの寿命はどのように算出されたものなのかを確認します。

コーホート寿命で算出した結果が寿命100歳超え

『LIFE SHIFT』の中で、人生100年時代の根拠となる寿命算出はその算出方式として「コーホート平均寿命」が用いられています。この算出方式では、医療分野で今後起きるイノベーションや生活習慣の改善が寿命を伸ばす影響を計算に入れて寿命を算出しています。医療は日進月歩であり日々進化しています。近年では再生医療の分野の研究も進んでいて、いろんな臓器を含む体のパーツの移植のハードルが今よりグッと下がる可能性もあります。

年金計算ではピリオド寿命で寿命を算出

人生100年時代の言葉の大前提となっている100歳超えという寿命がコーホート寿命で算出されているのに対して、日本を含む様々な国の年金算出ではピリオド寿命という算出方式が用いられています。ピリオド寿命方式の特徴は、医療の進歩などの寿命への影響を全く考慮しないということです。

イノベーションと生活習慣改善は今後も続くと考えるのが妥当

年金の算出では原子を確実に捻出するためなどの特殊な事情があるためピリオド寿命方式を用いる必要があるかもしれません。しかしながら、未来全般を考えるときにピリオド寿命方式を採用するのは妥当ではありません。なぜなら、今後突然、医療分野の進歩が止まりイノベーションもなくなって、しかも生活習慣の改善もストップするという状況は考えづらいためです。

100歳を超えて生きるのは誰か

人生が100年以上の長さになるという考え方について検証するときもう一つ大切なポイントがあります。それは、100歳を超えて生きるのが誰かということです。

「人生100年時代」では、100歳を超えて生きる人が珍しくない状態になると言われています。これをもう少し詳細に言うと、『LIFE SHIFT』では以下のように説明されています。

「今20歳の人は100歳以上、40歳以上の人は95歳以上、60歳の人は90歳以上生きる確率が半分以上ある」「2007年に日本に生まれた子どもの50%は107歳まで生きる」

『LIFE SHIFT』リンダグラットン、アンドリュースコット

上の記述を見て分かる通り、今生きている全ての人が100歳以上まで生きるとは言ってません。誰が100歳を超えて生きると言われているかと言うと、『LIFE SHIFT』が出版された2016年時点で20歳の人や、2007年に生まれた子どもの50%が100歳を超えて生きると述べられています。

ある記事では、「男性は約80歳女性は90歳手前で人生が終わるし健康寿命はもっと短い。100歳を超えた人は約6万8000人にすぎない。人生100年時代なんてとんでもない」みたいなことが書かれていますが、これは2020年手前の今この時代の状況から人生100年時代はあたかも嘘だと述べているように見えますが、全くの見当違いです。論じている時点がずれていると言わざるをえないでしょう。

2020年頃に60代、70代、80代である方々が100年を超えて人生を生きるとは、『LIFE SHIFT』でも述べられていません。同じように並べて描くなら、2020年頃に10代や20代の人は100歳を超えて生きる確率が高い、と説明されているのです。

ただし、60歳以上の人でも90歳以上までは生きるかもしれないと言われているので、人生100年時代という言葉で象徴される人生の長期化にまつわる諸々の変化や課題に全くの無関係として見過ごすのは危険であることを言い添えておきます。

人生100年時代はやってくる確率が高い

以上の検証から、少なくとも2020年時点で10代や20代の人が100歳に到達する2100年前後には、多くの人が100歳を超えて生きる人生100年時代はやってくると言えます。この記事を書いている2020年時点現在はその準備時期に当たります。そのため各国の政府が社会システムの整備等の準備を進めているのです。また2020年時点ですでに60歳以上の人も言葉通り100年を超えなかったとしても90歳を超えて長く生きる人は増えてくることが予想できます。

人生100年時代はやってきそうだということを確認できたところで、次からは人生100年時代に関してしばしば見かける気になる主張を検証します。

人生100年時代は日本政府が言い出した?

日本政府が勝手に人生100年時代という言葉は言い出したんだという主張について、次は検証し解説します。

「人生100年時代」はロンドンビジネススクールから生まれた

人生100年時代という言葉は、英国の組織理論家でありコンサルタントであるロンドンビジネススクール教授のリンダグラットン氏と、ロンドンビジネススクール経済学部教授、前副学部長でありオックスフォード大学オール・ソウルズ・カレッジ特別研究員、また英国経済政策研究センター特別研究員でもあるアンドリュースコット氏が、著書『LIFE SHIFT』の中で出した言葉です。そのあと日本政府も人生100年時代構想会議を構成するなどして本格的に取り組むようになりました。

小泉氏の政策提言が日本政府取り組みのきっかけとなった

『LIFE SHIFT』のなかで打ち出された考えである人生100年時代を知った小泉進次郎衆議院議員が2019年4月に自民党厚生労働部会で「新時代の社会保障改革ビジョン」を発表し、人生100年時代に向けた政策提言を行い、それがその後の日本政府の取り組みとなり世間でも人生100年時代という言葉が知られるようになったという流れです。

その後人生100年時代構想会議は継続的に開催されており、最近では平成30年6月13日に第9回が開催されました。

参考:政策会議一覧

日本の中でこの言葉を言い出したのは政府なのかもしれませんが、日本政府が独自に言い出したものではありません。

政府が人生100年時代を言うのは、年金保険料を払わせるため?

次に、「日本政府が人生100年時代を言うのは年金保険料を払わせるため」という主張について検証します。

政府は人生100年時代を大きな環境変化と捉えている

年金はご存知の通り現行の社会システムにおいて人生後半の生活を支えるためのシステムの一部です。確かに政府は人生100年時代への対応の一環として年金システムへの取り組みも含めていると思いますが、あくまでも取組対象の一部です。政府は人生100年時代を人口動態変化を伴う社会の大きな変化だと捉え、長寿化する社会で私たちがどうサバイバルするか、そのために必要な社会システムは何かの検討が必要だと捉え、取り組んでいます。

参考:「人生100年時代構想会議」の目的と主要テーマ

年金は社会保障システムの一部であり国民みんなで維持していくもの

現行の日本の年金制度で年金保険料をたくさん払わせるには国民がたくさん稼がなければなりません。

人生100年時代には私たちはこれまでより長く生きる事になるため私たち一人一人に資金が必要になりその資金をどこからどうやって捻出するのかという課題にみんなで取り組む必要があります。そしてその解決策の一つが相互扶助(みんなで助け合い)の仕組みである年金です。長寿化した日本でもこの解決策としての年金がちゃんと機能するにはどうすべきなのかの答えが、私たち一人一人が今よりは長く引退はせずに社会に貢献する、稼ぐということなのかもしれません。

日本の年金保険料と支払われる年金

日本の年金保険料の支払と、老後に受け取る年金との関係は賦課方式という仕組みで成り立っています。賦課方式は民間の生命保険会社の年金商品によくある積立方式とは異なり、自分が将来もらう年金のためのお金を自分が払うのではなく、今の働き手世代が今生きている高齢者に払う年金原資拠出のためにお金を払うという方式です。
同時代を生きている人たちの中で働いて保険料を支払う人と年金を受け取る人へとお金を仕送る形が取られているため、保険料を払う人と受け取る人の人数バランスによって支払う人の負担の大きさが変わってくるのが特徴です。

払ったお金が何に使われるのかはしっかり確認

先ほど書いたように年金を含め社会システムはみんなで維持していくものです。日本では源泉徴収制度の影響もあってか税金が何に使われているかの確認や、使いかたに納得がいかない場合の選挙などを通した意思表示行動が弱い傾向にあります。

人生100年時代にはこれまでよりも私たちは長く生きるようになるため、長くうまく社会が回るように集められたお金が何に使われていてちゃんと効果は出てるのかなどもしっかり確認したほうがいいでしょう。年金で言えばそれは年金保険料と受け取る年金の問題ですが、それ以外でも私たちが気にしなければいけないお金はたくさんあります。国や地方自治体に払っている各種税金とその使い道は、いろんな人がいる社会の状況でリソースをどう調達し富をどう配分するかと言う課題への解決策です。その解決策は当然ながら時代や状況に合わせたアップデートが必要で、アップデートの主体は国民です。その意味では、人生100年時代を待つまでもなく、私たち一人一人の「自己責任」は常に存在しているといえます。

この点も、より長い人生を生きることになる人生100年時代の重要なポイントです。

人生100年時代の年金を含めた資金戦略

人生100年時代に私たちが長く生きるようになると、年金を含めて私たちが考えるべき人生の中でのお金周りの戦略は以下のようになるでしょう。

  1. 国民は100歳を超えて長く生きるようになる
  2. 人生の時間が増えるので長い間健康でいられるように自分への配慮やメンテナンスが必要
  3. 年齢を重ねても単に余暇を過ごすのでなく社会に参画し貢献して暮らす
  4. その結果、年齢を重ねても年金以外に収入が得られるようになるので年金と合わせて個人生活に充てる
  5. 人生100年時代には社会の仕組みも色々変わるかもしれないので公的年金に頼りすぎない長期プランが必要

まとめ:「人生100年時代は嘘」は、ウソ

この記事では、人生100年時代は嘘だという主張について、また人生100年時代についてしばしば見かける関連主張を検証しました。

結論として、人生100年時代は嘘だという主張は何かの勘違いか間違いであり、「人生100年時代は嘘」という主張こそがウソだということを解説しました。

人生100年時代には、より長い目線での人生設計、より長い目線での社会設計が必要です。いろんなものをバランスして持続的にするために、一人一人がより考えて行動することが求められています。