就職や転職の面接では嘘をつくべきでないこれだけの理由

就活や転職の面接で有利になるため嘘をつくべきか悩んでいる。面接で嘘をついたらバレるのかが心配。そんな風に悩んでいる方へ。就職や転職では絶対に嘘はつくべきでないです。端的に言って、最終的に企業も応募者もみんな不幸になってしまうからです。

この記事では、新卒時の就職活動を含めて嘘を一切つかず、新卒の会社の後、これまでに大手企業からコンサルファーム、コンサルファームからベンチャー企業と二度の転職を経験し面接官も経験したことのある私が、就職や転職の面接で絶対に嘘をつくべきでないこと、そしてその理由を応募者目線で解説します。


面接で嘘をつきたくなる背景

まず初めに面接で嘘をつきたくなる背景を考えてみます。

本来面接では応募者も企業側も全て真実に基づいて認識合わせをしたり期待値のすり合わせをしたりすべきです。でも残念ながら実際の就職活動や転職活動ではどちら側も嘘をもとに話を進めてしまうケースがあると思います。

応募者にとっては、面接の場ではライバルがたくさんいて、その中で面接官に自分をアピールしなければなりません。特に新卒時の採用面接では、一度に多くの人が面接を受ける集団面接もよく行われるため面接官に対して自分を強くアピールしよく見せるために嘘をつきたくなるのかもしれません。


応募者が面接でつく嘘の種類

次に、面接でついてしまう嘘の種類を整理します。

面接でつく嘘の程度や内容もいろいろあると思いますが嘘は大きく分けて以下のものがあります。

  • 活動実績の嘘
  • 志望度合いや選考進捗についての嘘

活動実績の嘘

よくある嘘としては自分のこれまでの活動について実際よりも大きな数字を達成したと言ったり、実際には全くやってないことをやったと言ったりするなどです。バイトリーダーやサークル活動のリーダーなど何かの活動のリーダーをやっていたなどの話や国際ボランティアへの参加歴などが面接でやたらと多く見られるのは、聞いている方からすると不思議な感じがします。(もちろん本当にやってる人もいるのでその場合は本当のこととして堂々と言うだけです)

志望度合いや選考状況についての嘘

それから、会社への志望度や選考プロセスの進捗状況についての嘘もあります。就職活動では第一志望でないのに第一志望だと言ってしまう場合や、他にも採用プロセスを進んでいる企業があるのに他にはなくて御社だけと言ってしまう場合がこれに該当します。この記事を書いている2020年時点ではわかりませんが昔は「第一志望です」と言わないと選考で先に進めない」みたいな企業がありましたね。この嘘をついてしまうのはそう言った企業が存在することが原因の一つでしょう。

就活や転職の面接で嘘をつくことで得られるもの

ここでは面接で嘘をついた結果として得られるものを見ていきましょう。

偽りの評価

面接で嘘をつき偽物の自分を説明したことで得られるのはやはり偽物の結果です。ここでは、仮に面接でついた嘘がバレなかったとした場合の偽りの評価についても先ほどと同じ分類で考えてみます。

活動実績についての偽りの評価

「バイトで自分が入る前と比べて売り上げを2倍にしました」「販売の仕事でエリア内トップの成績を納めました」「バイトリーダーを務め社員も思いつかなかった現場の改善を行いました」このようなお話を面接官として私が新卒の方の面接に携わった時によく聞きました。

会社にもよりますが面接は現場の社員が多くの部分を担当していることもよくあります。忙しい通常業務の合間に面接をしていることが多いのでそんなに細かく事実確認などを行えることは稀でしょう。

そこで嘘の話をして面接官を騙してしまうこともできるのかもしれません。(上の話が全て嘘と入ってるわけではありません。私自身、本当の話として「xxリーダーをしてました」と語った一人です。)

面接官を騙し切れた場合、以下のような評価が得られます。

  • 実際よりも高い能力やスキル
  • 実際よりも優れた人格的な卓越性
  • 実際は成し遂げていない高い実績

志望度合いや選考状況についての偽りの評価

志望度合いや選考状況について就活や転職活動の面接で嘘をつくことで以下のような評価が得られます。

  • 実際よりも高い志望度合い(エンゲージメント)
  • 実際よりもその企業と親和性があるという印象

「御社が第一志望です。なぜならば・・・」とか、「他の業界・企業は受けていません。なぜならば・・・」という話を受ける会社ごとに用意して面接でそれぞれ語ることによって、もしかするとその企業の面接官がその応募者は志望度が高いんんだと考えてくれるかもしれません。製品のファンであるという話や業界におけるその企業の優位性や卓越性、他社との違いで特筆すべき点、応募者がその企業の主宰する何かの慈善活動で受けた恩など、ネタはいくつかあるでしょう。

会社からの「借り」

就活や転職面接で嘘をつくことでもう一つ得ることになるのが会社からの借りです。こちらは少しわかりにくいのですが、嘘をついたということで後ろめたさが生じ、その嘘を受け入れて貰ったという恩を受けることになり、その結果「借り」の感情が生じます。

もしかするとこの借りの感情がエンゲージメントの一部になるのかもしれません(ただし健全なエンゲージメントとは異なります)

就活や転職の面接で嘘をつくリスク

就活や転職の面接で嘘をつくことによって得られるものの次はリスクについて解説します。

就活や転職の面接で嘘をつくと以下のようなリスクがあります。

  • 自分や周りに嘘をついて生きていく癖がつく
  • 嘘をついて入社する集団に所属することになる
  • 後ろめたさや能力面であとで苦しむ
  • 自尊心が下がり不健康になる

それでは次から順に解説していきます。

自分や周りに嘘をついて生きる癖がつく

就活や転職活動の面接で嘘をつくことのリスクの1つ目は、自分や周りに嘘をついて生きる癖がつくことです。面接は人生の次のステージの内容を決める大切なものです。その面接で、作り込んだ嘘のストーリーを語り、その結果として内定を勝ち取る経験をしてしまうと、「社会は嘘をついてうまくやったもの勝ち」という考えに陥ってその後も様々な嘘をついて生きていくようになるのではないでしょうか。

このことは短期的にはいいように思えても長期的に見れば自分の信用という大切な資産の価値を暴落させることに繋がりかねません。(面接での嘘がバレるケースもこれに含まれますね)

嘘で生きる集団に所属することになる

2つ目のリスクは「嘘で生きる集団に所属することになる」ことです。

このリスクは主に志望度合いについての嘘に関係しています。「御社が第一志望です」という嘘をつかないと選考を突破できないという企業の場合、入社する人はみんな「御社が第一志望です」と言っているわけです。それが本当である人ももちろんいると思いますが、嘘を言って選考を突破している人も社員の中に一定数混じっていることでしょう。

企業としても嘘をつかないほうがいいというのは当然のように思えますが念のために補足すると、最近の様々な企業の不祥事をみるにつけ、「都合の悪い真実を嘘で塗り固める」ことでコトを前に進めようという企業のやり方はまず嘘がバレたときのインパクトが大きすぎます。

さらに、社内でのコミュニケーションを考えた場合にも「都合の悪い真実を嘘で塗り固める」ことが常態化する企業が居心地がいいと言えるでしょうか。嘘で塗り固める活動スタイル、ガバナンスはあまりに多くのリスクを孕んでいます

後ろめたさや能力面であとで苦しむ

次に紹介する3つ目のリスクは、「後ろめたさや能力面で後で苦しむ」です。順に解説します。

後ろめたくて苦しい

このリスクの1つ目のポイントは後ろめたさです。面接で嘘をつき、その嘘を突き通して面接を突破したことは他の誰かに知られなくても自分自身ではわかっています。そのため嘘をついたことに対する後ろめたさが心のどこかに引っかかってしまう可能性があります。

能力面で苦しい

2つ目のポイントは能力面です。面接で実際には成し遂げていないことをやったと言ってしまうとその後にも会社や同僚に嘘を突き通さなければいけないため、実際にはやっていない・できないことを成し遂げる能力や行動が当然のように求められることになります。その時に特に問題なくできればいいのですが、そうでない場合は実際にできないことによる苦しみと、周囲からの評価の面でも苦しむことになるでしょう。

自尊心が下がり不健康になる

就活や転職活動の面接で嘘をつくことによる最後のリスクとして「自尊心が下がり自信がなくなる」ことを解説します。

面接に限ったことではありませんが、自分を大きく見せたりよく見せたりするための嘘はつけばつくほど自尊心が低下し健康維持にも悪い影響を及ぼしかねません。実はこれこそ面接で嘘をつくことによる最大のリスクです。

嘘をつくことで自尊心が下がる

自尊心という言葉は虚栄心と意味が混同されやすいので先に意味を確認します。

自尊心とは、他人からの評価ではなく、自分が自分をどう思うか、感じるかである。つまり、一時的に快感を与える、知識、技術、財産、結婚、慈善行為や性的な征服、容姿から生まれるものではなく、言い換えれば、外に求めることでも、人に与える印象でもない。競争でも比較でもなく、自尊心の重要な原因は自分とも他人とも戦っていない状態である。
その起源には、幼いころに大人から尊重され、価値を認められたか、励まされたかといったことがある。しかし、最も重要な影響があるのは、自分自身で選択したということである。言い換えれば、自分の可能性を実現したいという気持ちから、生き方を変えるということから自尊心が育まれていく
自尊心は、自分が有能であるといういわゆる自信と、自分に価値があるという自尊の2つの要素から成り立っている。研究者によれば、自尊心の欠如は、不安、憂鬱、恐れ、アルコールなどの乱用、成績不振、暴力や虐待、自殺などにかかわっている。

出所:ウィキペディア

上記の説明にある通り、自尊心は自分が自分をどのように評価するかであり、他人に対して自分をどのように見せたいかという他人にベクトルが向いたものではありません。自尊心は自分に対して向けられた関心であり自分に対する考えです。

この自尊心を育て維持する上で大切なのは、自分の可能性の実現のために自分自身の生き方を主体的に選択したかです。面接で嘘をついて突破し、その後も嘘をつき続ける自分を自分自身が知っている状況では、自分自身に対する評価が低くなってしまい、自尊心は下がっていくことになるでしょう。

自尊心が下がることで不健康になる

私たちは他の人に対して何かを話す以上に、実は自分自身に向かって毎日多くの言葉を投げかけています。実際に独り言を呟くこともあるかもしれませんが、実際に音を発しなかったとしても心の中でかなり多くの言葉を繰り返し呟いていて、これを「内言」と呼ぶそうです。この「内言」は何度も何度も繰り返し自分の中で呟かれて、精神を形作っています

参考:ウィキペディア「独り言」

内言は心の中でかなり多くの回数にわたって繰り返されるので、その内容がなんであるかはとても重要です。自尊心が低い人の場合、自分自身に対する認識が悪いものになりがちなので、悪い言葉を内言として呟いてしまう可能性が高くなってしまいます。何度も悪い言葉を自分自身につぶやく結果、悪い暗示がかかってしまい心身の健康状態を良い状態に維持できなくなってしまうかもしれません。

面接での嘘はコスパが悪すぎる

ここまでで、就活や転職活動の面接で嘘をつくことで得られるものとリスクを解説してきました。

面接で一時的に偽りの評価が得られる一方で、会社に借りができリスクとしては自分自身の嘘をつく習慣の形成や後ろめたさ、能力面での苦しみの恐れ、さらには自尊心の低下や健康への悪影響などがありました。

ここまでに見てきた就活や転職活動の面接での嘘についてどのように考えるかは個人差あるとは思いますが、私は端的に言って面接で嘘をいうのはコスパが悪すぎると思います。

偽りの評価を得られるものの、それは事実の支えがないため実に危うい評価である一方、自分自身の根幹に関わる様々なリスクを抱えることになります。このような長期的な苦しみの原因ともなりかねないリスクを追ってまで偽りの評価やそれによる報酬を得たいと私は思いません。

まとめ

この記事では、就活や転職活動の面接で嘘をつくべきでない理由について解説しました。

面接で嘘をつくことで偽りの評価を得て面接を突破して内定を勝ち取ることは長期的に見て全くお勧めできません。その理由は得られるものに対してリスクがあまりに大きくコスパが良くないからでした。

この記事を参考に面接で一人でも多くの応募者の方が真実に則り面接に取り組まれ本当にご自身にあった仕事を選ばれることを願います。