【体験談】大手コンサルからITベンチャーに転職してみて感じたこと

コンサルからベンチャーに転職を考えていて、コンサルファームからベンチャー企業に転職してみたリアルな情報が欲しい方へ。

この記事では実際にコンサルティングファームからITベンチャー企業に転職した私が、実際にITベンチャーに転職してみて感じたコンサルティングファームとITベンチャー企業それぞれの特長や違いについて実体験をもとに解説します。


コンサルファームとITベンチャーの共通点

コンサルファームとITベンチャー企業には共通点があります。それは、世の中に新しい価値を提供するための仕事をしているという点です。

コンサルファームでのコンサルタントの仕事は「新価値の創出支援」

コンサルファームでのコンサルタントの仕事は基本的にはプロジェクト単位で構成され、一定期間の間にクライアント企業の依頼に基づいてクライアント企業に対して支援を行います。プロジェクトの種類は様々で、企業戦略や事業戦略の立案、組織体制性の整備や変革、ガバナンスやオペレーションの強化などがあります。

新事業や新たな商品・サービスの開発販売支援のプロジェクトであれば、「新しい価値を生む支援をしている」というイメージがつきやすいと思いますが、それ以外のプロジェクトでも広く見れば世の中に新たな価値(=新しい体験)の創出を支援している仕事と言えます。例えば、オペレーションの改善プロジェクトであれば、「より品質の高いサービスの提供」や「より迅速な商品提供」がプロジェクトの目的となります。これらは例え商品やサービス自体が新たなものでなかったとしても、消費者にとっては新たな体験を実現するためと言えます。

ITベンチャーでの仕事は「新価値の創出と提供」

ITベンチャー企業は世の中に対して新しい価値を創出し提供しています。例えば中古品の流通の新たなプラットフォームとなったメルカリや新しい形の実名主義コミュニケーションのプラットフォームを提供するfacebook、字数を限定することで即時的で拡散されやすいコミュニケーションのプラットフォームを提供するTwitterなどはもはやベンチャーとは呼べないとは思いますが、元々はもちろんベンチャーでした。

ITベンチャー企業といえばアメリカのシリコンバレーが多くのベンチャー企業が集まる場所として有名ですが、現在ではヨーロッパ、アジア、そして日本でもITベンチャーの拠点となる都市が生まれそこを中心に金融、健康、人事、オペレーション改善など様々な分野で多様なイノベーションをうみ日々製品化が進んでいます。

ベンチャー企業のステージ

ベンチャー企業と言っても、主にその事業規模によっていくつかの段階に分かれており、このステージによってもベンチャー企業での仕事内容はかなり変わってきます。この事業の進み具合やスケールの段階をステージと呼んだりします。

ベンチャー企業のステージは、一般的にシード、アーリー、イクスパンション、レーターの4段階です。

ステージ概要
シード事業がまだ完全には立ち上がってなくて研究・製品開発が中心活動の段階
アーリー製品開発を続けながら、実際に製品を作り始め初期のマーケティングや販売活動をしている段階
イクスパンション製品を作って出荷を開始しており、徐々に製品が売れてきている段階
レイター持続的なキャッシュフローがあり、IPO直前まで来ている段階

ベンチャー企業のステージによる仕事の違い

上記のステージが早い段階であればあるほど、従業員も少なく組織もまだ整っていないので役割分担も緩やかで、役職にかかわらずいろんな仕事を何でも屋的にやることになります。それが徐々にあとのステージになってくると従業員も増え、役割分担もだんだんと明確になり、所属する組織やロールに応じた仕事を担うようになります。

コンサルファームは出身者はエンタープライズ営業を担いやすい

コンサルファームがクライアントからいただくコンサルティングフィーはそれなりに高いこともあり、大企業のクライアントを対象としてコンサルティングサービスを提供していることが多いと思います。この場合、コンサルタントの役割は大企業(=エンタープライズ)の抱える何らかの課題の解決です。課題解決のなかで、活用すべき有効なソリューションを選定しそのソリューションも用いて課題を解決する計画を描き、場合によってはその実行フェーズもサポートします。

ITベンチャー企業は何らかの新しい価値を提供できるソリューションを提供していることが多く、お客様の課題解決に向けてそのソリューションを使ってもらうことが大切です。そのように考えると、コンサルティングファームで大企業が抱える課題解決の方向性等についてのアドバイスをしていたコンサルタントは、それに近い仕事としてITベンチャー企業の中では大企業むけのソリューション営業を担いやすいと言えるでしょう。


コンサルファームとITベンチャーの違い

次にコンサルファームとITベンチャーの違いについて解説します。

先ほども書きましたが、コンサルファームの仕事が「新価値の創出支援」であるのに対し、ITベンチャー企業の仕事は「新価値の創出と提供」です。お気づきかと思いますがコンサルティングファームでの仕事はあくまで「支援」です。この点は一般的にコンサルティングファームと事業会社の違いと言われる点であり、コンサルティングファームから事業会社に転職しようとする方の多くの志望動機と関連している点です。

コンサルファームで様々なクライアント企業の支援を経験し、今度は自分自身が価値提供の主体となって世の中に価値を提供したい。このような志向の方がコンサルティングファームからベンチャー企業に転職されることが多いと感じます。

コンサルファームからITベンチャーに転職するときの留意点

ここでは、基本的には特に大手コンサルファームからITベンチャーに転職を検討する際、注意した方がいい点について解説します。

注意すべき点は主に以下の3つです。

コンサルからベンチャーに転職する際の留意点

・社会的信用や知名度
・組織の成熟度
・福利厚生

社会的信用や知名度

特に大手のコンサルファームの場合、Big4と言われる会計事務所が母体とするコンサルファームも多いことから、社会的信用は高いことが多いです。また知名度についても、消費者なら誰もが知っている大手事業会社ほどの知名度はないものの、最近ではコンサルファームが就活の人気ランキングに上がるようになってきたことなどもあって、それなりに高いといえます。

一方、ベンチャー企業はどうかというと、やはり会社が新しく一部の投資家などには知られていたとしても社会的信用や知名度では決して高いとは言えません。

このようなベンチャー企業の特性による具体的な影響としては、例えばローンを組むときに審査の通り安さが変わったり、企業名を言った時の友人知人の反応が変わるなどが挙げられます。

ベンチャー企業に転職する場合はこの辺りのことは理解し、まずは自分自身が商品やサービスの新規性や価値について十分に理解しその価値を自ら社会に伝え広げる心意気が必要です。

組織の成熟度

大手コンサルファームとベンチャー企業では組織の成熟度も異なります。大手コンサルファームは大企業なので会社としての枠組みがしっかりしています。部門や役職がしっかりと分かれて業務分掌が定められており、多くの場合概ね分掌に規定される通りに各部門や各役職が機能していることでしょう。人事など各種制度や社内の事務オペレーションがある程度整っている場合がほとんどです。

しかしながら、ベンチャー企業ではステージによって差こそあるものの、組織はまだまだ「緩い」状態です。そのため組織間の役割分担も役職、各種ルールやオペレーションについても、定められている場合でも大企業ほどかっちりとした運用がなされているわけではないことがほとんどです。

早いスピードで成長していくベンチャー企業の場合、ソリューションの提供先となるクライアント企業もどんどん大きくなり、その結果として取引にあたって注意すべきことや企業としての責任も大きくなっていきます。そのような状況でありつつも組織は「緩い」わけですから、メンバー一人一人の意識や行動がとても重要になります。例としてITセキュリティなどについて考えていただけると想像しやすいと思います。

福利厚生

組織の成熟度と深く関係する話ですが、転職する場合の留意点として押さえておきたいのが福利厚生についてです。

大手コンサルファームの福利厚生は、国内を代表するような大手事業会社と比べると会社によっては少し見劣りする場合もあるもの、ほとんど同じと言ったところではないでしょうか。大きく違うとすれば、住宅手当がない点が上げられるかもしれません。

ベンチャー企業の福利厚生については、企業によって千差万別なので、入社する前にちゃんと確認されることをおすすめします。通勤交通費などは出るケースが多く、企業によってはフリーランチ等、事業会社やコンサルファームでは珍しい福利厚生が受けられることもありますが、企業によっては必要最低限のものだけにとどまっている場合も考えられます。

組織の成熟度が低く、また業績についても大手コンサルファームほどの安定性はないため、雇用契約時に書面に書いてある場合でもその後業績の低迷により打ち切られたりするケースも考えられます。(ただ、逆に契約時の書面には書いてないけど実際には受けられる福利厚生があるケースもあります)

ストックオプション等

ベンチャー企業でそのステージが早ければ早いほど組織がゆるく仕事の境界や手順も定まっていなかったり社会的信用が低かったりと大変な点や懸念すべき点が多いことを紹介してきました。

その代わり、というわけではないのですが、ベンチャー企業では一般的にストックオプション等の形で給与とは別に経済的便益を提供することが多いように思います。このような給与とは別の経済的便益は、ステージが早い(つまり未成熟な)段階でジョインすればするほど、経済的便益は大きいケースがほとんどです。

まとめ:コンサルからベンチャーへの転職はスリルも魅力も多い

この記事では、コンサルティングファームからITベンチャーに転職した経験をもとに、コンサルファームとベンチャー企業の共通点や違い、ITベンチャーでの仕事内容と元コンサルタントの経験の活かし方、ベンチャー企業に転職する場合の留意点などについて解説しました。

コンサルファームからベンチャーに転職することはリスクを伴いますが、ベンチャーでは大手では得られない多くの経験と刺激が得られ、世の中の最新に触れる魅力もあります。

完全に会社の看板を外すところまでは行かずともかなり看板を小さくして新しい価値の創造と提供に挑戦したい方は、ぜひベンチャー企業への転職を検討してみてください。