人生100年時代とは?人生100年時代の人生設計はどうすべきか?

人生100年時代とは? 人生100年時代の生き方はどんなものになるんだろう。と考えている方へ。

この記事では、リンダ・グラットン氏の著書『LIFE SHIFT』の内容を紹介しつつ、人生100年時代とは何かを解説します。

この記事を読んでいただくことで人生100年時代という言葉に含まれる複雑に絡み合った示唆について理解いただき少しでも人生の役に立てていただけたらと思います。


人生100年時代とは、100年生きるのが普通になる時代のこと

人生100年時代という言葉は、心理学者のリンダグラットンとアンドリュー・スコットが提唱した言葉です。

人生100年時代(じんせいひゃくねんじだい)とは、ロンドン・ビジネス・スクール教授のリンダ・グラットン(英語版)とアンドリュー・スコット(英語版)が『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社)で提唱した言葉。

世界で長寿化が急激に進み、先進国では2007年生まれの2人に1人が100歳を超えて生きる「人生100年時代」が到来すると予測し、これまでとは異なる新しい人生設計の必要性を説いている。

日本では本の発売と同時期に小泉進次郎が使用したことで広く浸透した。

2017年9月には首相官邸に安倍首相を議長とする「人生100年時代構想会議」が設置され、2018年6月には「人づくり革命 基本構想」が発表されるなど政策への反映が進められている。

出所:ウィキペディア

人生100年時代という言葉自体が意味するのは、「100年以上生きることが珍しくない時代」ということになります。

「人生100年時代」が有名になった理由

このように人生100年時代という言葉そのものは単純な意味なのですが、この言葉がここまで有名になり日本政府も本格的に取組をしているのには理由があります。それは、多くの人が100年以上生きる時代になることで私たち個人や社会に大きな影響があり、日本政府もそれを受けて「人生100年時代構想会議」を設置し本格的に取り組んでいるからです。

人が100歳を超えて生きることが当たり前になる時代が間も無くやってくる、そしてその結果として個人の生き方や社会保障制度、社会インフラ、雇用のあり方や働き方、教育のあり方などに大きな影響があるというところがポイントです。


人生100年時代の根拠

人生100年時代は嘘だという主張を見かけることがあります。「年金の保険料を払わせるための嘘だ」とか、「財政崩壊を隠し個人の自助努力を強いるための日本政府の嘘だ」とか言われることがあるようです。

嘘だと言われる際によくみられる主張の一つが「人生100年時代というけどそんなに寿命は伸びない」という主張です。この主張の根拠になているのは厚生労働省による「65歳が特定の年齢まで生存する確率」という表です。

参考 『iDeCoを始めとした私的年金の現状と課題』 p.21にる「65歳が特定の年齢まで生存する確率」の記載あり

この表によると1990年生まれの人でも100歳まで生きる見込みは男性で6%、女性で20%となっており、これでは100歳を超えて生きるのが当たり前の時代はまだまだ来ないように見えます。

ところが、これにはカラクリがあります。リンダグラットンが著書『Life Shift』で書いているように、寿命の予測の仕方には大きく考え方の違う2通りの方法があり、日本を含む多くの国の年金の算出には医療分野を含むイノベーションや健康に関する啓蒙活動による寿命の伸びを全く考慮しない場合の予測結果が用いられています

『Life Shift』では、この点も踏まえて解説されており、多くの人が100歳を超えて生きる人生100年時代が来るという予測は、イノベーションや啓蒙活動の影響を考慮した場合の平均寿命をもとに語られていることが説明されています。イノベーションや啓蒙活動の影響を踏まえると、穏健な楽観主義の立場で見積もって近いうちに110歳-120歳くらいまで生きる世代が出てくると書かれています。

リンダグラットンも『Life Shift』のなかで述べている通り、医療技術の日進月歩や禁煙や運動習慣の造成等の実績を考えると、これらによって寿命が伸びる可能性が全くないというのは正直考えにくいので、やはり人生100年時代は本当に近々やってくる、と考えるのが妥当ではないでしょうか。

人生100年時代には社会が変わり人生設計が変わる

ここまでは人生100年時代とは何かについて説明し、世間を騒がせている理由や本当にやってくるのかといった点いついて解説しました。次に、人生100年時代にはどんな変化が起こり、私たちにどんな影響があるのかを書きたいと思います。

人生100年時代に経験する変化は大きく分けて2つ

人生100年時代に私たちが経験し今後の私たちへの影響を考えるべき変化は、大きく分けて2つです。1つ目は、長く生きるうちに劇的に変化する社会環境、そして2つ目は、人生100年時代を楽しく健やかに生きるための私たち自身の人生設計、です。

長く生きるうちに起こる社会環境の変化

長く生きるようになるというのが人生100年時代のいちばんの特徴です。その結果生きている間に多くの社会の変化を経験することになります。環境を分析するフレームワークに「PEST」があります。このフレームワークは環境をより具体的に便利です。

マクロ環境分析をおこなうマーケティングフレームワークです。 PEST分析のPESTとは、「Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)」の4つの頭文字を取ったものです。

出所:https://cyber-synapse.com/dictionary/en-all/pest-analysis.html

100年を生きるうちに、私たちは政治、経済、社会、テクノロジーそれぞれについていろんな変化を経験することになるでしょう。例えば、テクノロジーの進化は目覚ましいものがあり、これまで人が行ってきた定型的な業務はRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAIによって担われるようになると言われており、実際に一部の業務ではその例が出始めています。それによって雇用や働き方は今後大きく変化することになります。そうなってくると私たち一人一人に求められる能力もこれまでとはきっと異なるものになることが予想され、教育システムも変わらなければなりません。

また近年では環境問題の進行について科学者が警鐘を鳴らしており、現在の経済活動に対する批判活動も発生している状況であり、現行の経済活動がこのまま続くのかも見通しがつきません。

上に挙げた例はほんの一例であり2020年現在ですでに見えている変化ですが、70年・80年・90年という時間の中で起こる変化は、全く現在では想像もできないような変化も起こるでしょう。

私たちの人生設計の変化

リンダグラットンは『LIFE SHIFT』の中で、人生100年時代の到来により「周りのみんなと一緒の行動をしていれば良い時代は終わった」と書いています。この言葉は、人生100年時代の到来が私たちの人生設計をより積極的に行う姿勢に変化する必要があることを示唆しています。

人生設計を積極的に行う必要がある背景には、先ほど紹介した「長く生きるうちに起こる社会環境の変化」も関係しています。一例としては、私たちが生きる社会が変われば社会のニーズが変化し求められるスキルも変化し新たなスキルや仲間を獲得するためのまとまった時間が必要となります。

人生設計とは

「人生設計」という言葉は、あまり聞いたことがないという人もいるかもしれません。この言葉は現在では例えば保険会社や銀行、不動産といった主に金融関係の営業の方の説明のなかで聞くことがある言葉です。

人生設計という言葉は、私たちの人生は生まれてから死ぬまでの間を全体的に見渡し、そのなかで起こる主なイベント(入学・卒業・入社・結婚・出産・退職、子供のそれらなど)を網羅的に考え、また合わせて病気や事故などのリスクイベントも一緒に考えて、それぞれに必要なお金を考え、自分の収入と支出をバランスし準備しておこうという考え方で、この活動を通して私たちの人生の全体を見渡し、全体として満足のいく人生となるようにしようというものです。

「人生設計」で絶対に抑えたいポイントとは

人生100年時代の人生設計で絶対に押さえるべきポイントはなんでしょうか。私たちはどのような点に注意して「設計」すればいいのでしょうか。まずは「設計」とは何かを考えるところから始めましょう。 「設計」とは

「設計」は元々は通常建築の世界で使われる言葉かと思います。設計という言葉はウィキペディアで以下のように定義されています。

設計(せっけい、英: design)とは、建築物や工業製品等といったシステムの具現化のため、必要とする機能を検討するなどの準備であり、その成果物としては仕様書や設計図・設計書等、場合によっては模型などを作ることもある。
時間的なものとしては、製作開始時期・供用開始時期・想定使用期間・量産品の場合の製作継続期間などがある。機能的なものとしては、使用目的・体積・面積・質量などがある。社会的な状況・環境としては、法的規制・地球環境などがある。試作は、仕様の検討のための手段であり、納得または合意するまで試作を繰り返す。使用できる資源の組み合わせは多くある。ライフサイクルコスト(生涯費用):調達可能な金額であるか。また、保守、廃棄を含めて、一番安く済む手法であるか。機械・器具・部品など:製作開始までに調達可能であるか。量産品の場合の製作継続期間中に途切れることなく調達可能であるか。保守:想定使用期間の間、保守に必要な部品・器具・作業員などが確保できるか。製造・試験・保守・廃棄作業を考えると、使用できる組み合わせが少ないことがある。

出所:ウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A8%AD%E8%A8%88

また、コトバンクでは以下のように書かれています。

 建造物の工事、機械の製造などに際し、対象物の構造・材料・製作法などの計画を図面に表すこと。「ビルを設計する」
 一般に、計画を立てること。また、その計画。「老後の生活を設計する」

出所:コトバンク https://kotobank.jp/word/%E8%A8%AD%E8%A8%88-548038

設計とは、建築を含む何かのシステムがうまく機能するよう必要な手順や必要なリソース(材料や作る人や資金など)を整理しスケジュールきめ(プロジェクト化)、実際にそのシステムが出来上がった後の運用も含めてうまくいくように考えること、のように要約できると思います。

設計要素の考え漏れは少なくしたい

建築を例に考えてみるとわかるように、設計する時は設計する対象のシステム(例えば家)について要素が漏れていると、その要素が重要なものであるほどシステムが機能しない重大な失敗につながります。例えば家を作るときにもし家の骨格となる構造体の材料について考え漏れていたということになると、大変です。

人生設計でも同じです。人生に大きな変化を与えるようなテクノロジーの変化や寿命の変化について考えもれると、設計の足元はおぼつきません。

以上のことを踏まえて、大切な要素が漏れて設計が台無しにならないよう、私たちの人生設計で押さえるべきポイントについて考えます。

人生設計のこれまでとこれから

旧来の人生設計では、簡単にいうとその前提として、私たちの人生は生まれて、学校に行って、働き初め、結婚もして、引退して、死ぬ。女性ならその間に出産と子育てがあるという流れが想定されていました。全ての事柄は、みんなこの流れを一直線に進み他の道や回り道などはイレギュラーでありほとんどないことが前提になっていました。

先ほども書いた通り、リンダグラットンは『LIFE SHIFT』の中で、人生100年時代の到来で「周りのみんなと一緒の行動をしていれば良い時代は終わった」と書いています。また別の箇所で、私たち一人一人がこれまでより積極的に自分自身の人生を自ら設計し主体的に進んでいくことが必要であると述べています。

そこで、ここでは人生を設計の対象となるシステムとみなし、人生を設計する上で考えるべき要素について一例として5W1H(Why(なぜ)、Who(だれが)、What(なにを)、When(いつ)、Where(どこで)、How(どのように))のフレームワークで整理してみたいと思います。

Why(なぜ人生を生きるのか)人生の目的
Who(誰が)人生の主体、主要な登場人物(パートナー、サポーターなど)
When(いつ)人生の主要イベントの発生タイミング
Where(どこで)人生の主要イベントの発生場所
What(なにを)人生で発生する主要イベントはなにか
How(どのように)人生をどのように過ごし、目標をいかに達成するか、ある活動にどれくらいの期間従事するか、等
人生設計のヒントー新しい人生のステージ

人生100年時代には私たちは100歳を超えて生きることになりそうです。その長さを考えたとき、上記の各要素についてこれまで私たちが考えてきた人生設計の内容ではうまく機能しなくなります

基本的には私たち一人一人で人生を考える主体ですが、リンダグラットンは『LIFE SHIFT』の中で、これからの時代の人生設計のヒントをくれています。その中の重要なものとして人生のステージがあります。

ここではそのヒントついて要点を解説します。

1つ目は、人生はマルチステージ化する、というものです。これまで想定されていた人生のステージは3ステージモデルと呼ばれ、「教育」「仕事」「引退」の3段階を直線的に進むものでしたが、人生100年時代には、新たに加わる「変身」のための移行期間ステージも含め、これまでよりステージそのものがふえることに加えこれら複数のステージを何度も行き来するようになリます

2つ目は、人生100年時代の人生は長いのでその長い人生を生き抜くための「資産管理」がより一層大切になる(クリティカルになる)というものです。ここでいう資産はお金だけではなくより広い意味の資産を指します。「体は資本」という言葉もありますが、健康も大切な資産の一つですし、スキルもそうです。100年という長い人生を乗り切るには、これら複合的な資産をちゃんと管理し育てていくことが肝要です。

まとめ:人生100年時代にしっかり備えプロアクティブに楽しもう

この記事では、人生100年時代とは何か、そして人生100時代側私たちにどのような影響をもたらすのかについて解説しました。長く生きられることに感謝しつつ、自ら人生の舵を取りリスクにもしっかり備えることで可能性に溢れた人生100年時代を生きましょう。